アッコ: |
こちらの診療科目は、消化器科、内科、小児科ですね。とくに内科や消化器科でよく知られる病院とお聞きしました。ところで、さきほど待合室にいて気づいたんですが、患者さん一人一人の診療時間が結構長いんですね。 |
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大江院長: |
そうなんですよ、初診の患者さんだと、どうしても10分くらいはかかってしまうんです。患者さんの生活習慣やご家族の病歴など、いろいろ知っておく必要もありますので。 |
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アッコ: |
えっ、生活習慣や家族の病歴?「ちょっと熱っぽい」とか「胸焼けしてるんだけど」なんていう患者さんでも、ですか? |
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大江院長: |
もちろんです。患者さんのお体の全体像を把握した上で、診療方針を決めてゆきたいですから。それに、ちょっとした症状に見えても、じつは深刻な病気が隠れていることだってあるんですよ。そういうサインにいちはやく気づいてあげるのが、私たち開業医の役目なんです。
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アッコ: |
そうなんですか。クリニックの診療というと、とにかく簡単なものと思っていました。「微熱があるんです、体もだるいし」「そうですか、風邪でしょうねえ。薬出しておきましょう」なんて具合に。 |
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■「ひとりの患者さんと向き合うために
あらゆる分野のエキスパートと連携しています」 |
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大江院長: |
考え方は医療機関によっていろいろだと思いますが、私は「早期発見・早期治療」こそ診療の命だと信じています。少しでも疑わしいところがあれば、なるべく早めに検査をしますね。場合によっては他の病院をご紹介することもあります。 いろいろな医療機関とのネットワークは当院の強み。大学病院や地域の中核病院、専門科目を持ったクリニックなどと連携し、患者さんに最良の医療を提供できるよう努めています。
こちらが誠意を尽くして診療し、紹介状を書くことで、先方も可能な限りの医療で応えてくれる--そうしたやりとりを続けていくうちに、信頼関係が出来上がりました。どこの医療機関が何に強いかもわかりました。今では、あらゆる分野のエキスパートを把握しています。たとえば、「食道ガンならこの大学病院」「顕微鏡検査ならあそこのセンター」といった具合に。
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アッコ:
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それは心強いですね!そうした連携へのこだわりは、何がきっかけで生まれたんですか。
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大江院長: |
勤務医時代に何度も苦い体験をしたせいでしょうね。ぼくは消化器系が専門だったんですが、クリニックの紹介で来院した患者さんの中には、すでに手遅れの症状を抱える人が少なくなかったんですよ。「もう少し早く手を打ってくれていれば」と、歯ぎしりしたことも二度や三度ではありませんでしたから。だから、開業医になったとき、「この地域から消化器系のガン患者をけっして出さないぞ」と決意したんです
いや、よくわかるんですよ。自分のクリニックでできる限り手を尽くしたいと考えるのは、ごく当然のことです。でもね、やはり一人の医師の力には限界がある。だからこそネットワークを築き、それぞれの専門分野を活かしながら、患者さんと向き合うべきだと思うんです。世間にはね、すごい腕と誠意を持った「赤ひげ」医師がたくさんいるんですよ。 |
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■「待ち時間解消が今の課題。
まずは急患を減らす努力をしています」
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大江院長: |
でもね、僕のやり方が、必ずしもすべての患者さんに歓迎されているわけじゃないんです。「薬だけ処方してもらえばいいや」という人もいますからね。検査や紹介状書きで時間をとられれば、診療時間も延び、それだけ待っている方々にご迷惑をおかけしてしまう。ときには患者さんから、「あんまり待たされたから、ほかの病院に行っちゃったよ」なんて、あとから言われたりしてね。 |
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アッコ: |
それはプレッシャーになるでしょうね。そんなクレームはよくあるんですか。 |
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大江院長: |
いや、稀ですね。大抵の患者さんは批判を口に出さないものでしょう?でもそれで、通院をやめてしまったら、ガンの早期発見どころか、ますます病気が進行してしまうかもしれない。だから内心、とても葛藤しています。とりあえず最近、電話予約やネット予約制度を導入しました。急患が減れば、それだけ待ち時間短縮につながりますから。 |
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アッコ:
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忙しい仕事や家事の合間を縫って来るわけだから、少しでも早く診察してほしいのが本音ですよね。でも病院はファーストフード店とは違う。現代人は「早い、安い、ウマイ」に慣れすぎてしまったのかもしれません。私たち患者も、医療についてもっと真剣に考えるべき時なのかも--。大江院長から、患者さんに言いたいことはありますか? |
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大江院長: |
ご自分の症状や、抱えている不安をなるべくありのままに教えていただきたいですね。「整理して話さなくちゃ」などと考える必要はありません。我々が知りたいのは、病名よりむしろ体全体のこと。何気ない言葉や話の中にこそ、ヒントが隠れているものなんです。 |