アッコ: |
う~む、建物は新しくてキレイなのに、窓から見えるお庭には古風な石灯籠が――。なんだか不思議な雰囲気ですね。開院されたのはいつなんですか? |
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長谷川院長: |
それが昭和40年なんですよ。ざっと40年前ですね。もともと母が院長を務めていたんです。母は今、八十歳ですが、七十歳過ぎまで現役でした。平成12年に代替わりし、私が院長になっています。
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アッコ: |
ええっ、40年前!さぞ長年通われている患者さんもおられるんでしょうね。 |
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長谷川院長: |
ええ、ご高齢の方も大勢みえますよ。おひとり、90歳近い男性が通院されているんですが、この方は開院前日にいらっしゃった「患者さん第1号」なんです。今も母が治した歯がちゃんと残ってますよ。 その一方で、若いお母さんやお子さんも多いですね。この地域には新しいマンションもたくさん建っていますから。近所の幼稚園や保育園で園医を務めているせいもあるかもしれません。
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アッコ: |
まさしく地域密着型ですね。ご近所ともすっかりお馴染みですか? |
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長谷川院長: |
私自身はここで暮らしているわけではないんですが、それでも知り合いは増えましたね。スーパーに買い物に行くと、患者さんにばったり会ったり(笑)。 |
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アッコ: |
お母様の代と比べると地域の様子はずいぶん変わったと思いますが、歯の悩みにも時代背景があるんでしょうね。 |
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長谷川院長: |
歯に対する衛生意識、審美意識はかなり高まっていますね。昔は早朝や深夜に、虫歯の急患がよくあったものなんですけど、この頃では減りました。それだけ予防を心がける人が増えたんでしょう。インプラント(永久歯根)の認知度もずいぶん上がりましたよ。以前は私が「インプラントという方法がありますよ」と説明していたのですが、最近では患者さんのほうから「入れ歯じゃなくて、インプラントにしてね」とおっしゃるほど。
もちろん、みんながみんなそういうわけではありません。たとえば園医をしていると、「今は子どもの歯も二極化しているなあ」と感じます。まったくどこも悪くないきれいな歯のお子さんがいる一方、すごく虫歯の多いお子さんもいる。昔は均一で、どの子も少しずつ虫歯があったものなんですが。
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アッコ: |
歯にも世相が表れているものなんですね……。 |
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■一本一本の治療を丁寧に、 ひとりひとりとのコミュニケーションを大切に |
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アッコ: |
さきほどインプラントの話が出ましたが、どんな方が受けられるんでしょう? |
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長谷川院長:
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いろいろですが、これから第二の人生を迎えようという、元気な中高年の方が多いように思います。たとえば定年退職した男性や、在宅介護を終えた女性などですね。「長年、家族のために頑張って働いてきたけど、これからは自分のために生きたい」「ずっとおばあちゃんの世話で、自分の時間が持てなかった。最期まで看取った今、もう一度、私らしい人生を生き直したい」――そんな思いから施術を決意される方が少なくありません。インプラントはお金も時間もかかる治療ですから、踏み切る際は、それなりのドラマがあったりするんですよ。
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アッコ: |
患者さんとはいろいろ雑談されたりするんですか? |
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長谷川院長: |
こちらからしつこくあれこれお尋ねすることはありませんが、ぽつりぽつりと自分のことを話してくださる患者さんは、結構おられますよ。ときには診療時間がかなり長引く方もいますからね。 |
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アッコ: |
長引くといいますと、どのくらい? |
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長谷川院長: |
診療内容にもよりますが、長くて2時間くらい。ときには半日がかりの治療もあります。じっくり型なんですよ、私。 |
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アッコ:
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回転率を上げて、収益を上げようとは思わない? |
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長谷川院長: |
ええ。「一本一本の治療を丁寧に、ひとりひとりとのコミュニケーションを大切に」というのがモットーなんです。これは母の教えでもありますね。もうひとつこだわっているのが、「けっして無理強いをしないこと」。歯を抜くときも、削るときも、患者さんが完全に納得しない限り、絶対に手をつけないようにしています。
どんなにボロボロになっても、患者さんにとっては大切な歯。失うのは抵抗があるはずです。だから、よく説明した上で、その気になってくれるのをとことん待つことにしています。 治療は遅れるかもしれない。でも、それはそれでいいと思う。内科と違い、歯科診療は患者さんと医師の共同作業です。お互いわずか30センチ程度の至近距離で、治療を進めるわけですから、信頼関係がないとうまくいきませんよ。医師不信に陥ったら、途中で治療を中断してしまうことになります。そうなったら最悪です。よけい症状が悪化しかねません。場合によっては、後々抜歯することになるかも。 |
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アッコ: |
それでじっくり型を貫いておられるわけですね……。でも、忙しい患者さんの場合は? |
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長谷川院長: |
たしかに時には患者さんをお待たせしてしまうこともあります。急いでいる方はもちろん、それなりに対応しますが。しかし、非常勤の医師を増やし、診療時間を短縮化して――とやってしまうと、うちの診療ではなくなってしまう。治療した歯については、できるだけ末永く責任をとりたいんです。 |
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■夢は100人の仲間作り |
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アッコ: |
オイルショックが歯科医への道を拓いた |
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長谷川院長: |
それがね、大学を卒業した後なんですよ。もともと青山学院大学の経済学部出身。ところがオイルショックの影響で、大卒女子はひどい就職難に見舞われまして。じゃあ手に職をつけようかと思い、卒業後、歯科技工師の専門学校へ通いました。
ところがこの仕事が結構ハードな上、時間も不規則で――。そこで母のようにいっそ歯科医になろうと決意しました。あらためて、歯学部へ入りなおしたというわけです。 |
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アッコ: |
文系から理系へ移ったわけですか。ものすごい根性ですね! |
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長谷川院長: |
元来、のんびり屋なんですけど、決めたことは絶対やり通しちゃいますね。 |
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アッコ: |
そういうところは、治療にも表れていると思われますか? |
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長谷川院長: |
そうですね。歯科医として、多くの業績を残したいとは思わないけれど、自分の仕事にはとことん集中して取り組みたい。経営者としては優秀じゃないかもしれないけど、納得して進んでいくことのほうが大事なんです。 |
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